自由社版『新編 新しい歴史教科書』でどう教えるか?

2010年4月から、横浜市の8区の中学校で『新編 新しい歴史教科書』が使用されることになりました。これらの区の多くの先生方が、自由社版歴史教科書の採択を望んでいたわけでもないのに、突如として市教育委員会が採択したことにとまどいを感じているのではないでしょうか。 この採択は、公正な採択のために設置された市審議会の答申を市教育委員会が無視し、しかも歴史教科書の採択だけが無記名投票で行われるという責任の所在を曖昧にする前例のない不当なものでした。そのように採択された自由社版歴史教科書は、検定で500か所あまりの指摘を受け不合格になり、再提出のさいにも136か所の検定意見がつけられ、これを修正してやっと合格したものです。しかも、検定で合格しているとはいえ、なお誤りや不適切な部分が多数あり、問題のある教科書です。このような教科書をどのように使用したらよいのでしょうか?
■まず、私たち「横浜教科書研究会」のこと、そしてこれまでのとりくみについてご紹介します。
 →横浜教科書研究会のとりくみ
■これまでに発表した声明を掲載します。
 →これまでに発表した声明
■自由社版教科書を使用して授業をしなければならない、現場の先生方、保護者の方、自由社版教科書を使っている中学生を指導される塾の先生方に、お読みいただきたい冊子です。 
 →自由社版『新編 新しい歴史教科書』でどう教えるか?
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はじめに(Vol. 2)


はじめに

 今年4月から、横浜市内の18教科書採択地区中8地区の公立中学校では、自由社版『新編 新しい教科書』の使用がはじまっています。私たち横浜教科書研究会は、この教科書で授業を行うことになる社会科の先生のために、さらに多くの市民の方々に向けて、本書の第1号を4月に刊行しました。そこでは、「歴史を学ぶことの意味」を論じるとともに、いくつかのコラムをとりあげてその記述の誤りや問題点を指摘しました。いかがだったでしょうか。
今回刊行した第2号は、いよいよ本論に入り、原始・古代・中世・近世の前近代編です。「歴史の授業で学びたいこと」、「教科書を使う際に注意すべきこと」、「授業のためのアドバイス」などを提示しています。私たちは、近年の歴史学の成果にもとづいて執筆する努力をいたしました。きっとお役に立つことと思います。

この4月に生徒に渡された教科書(供給本)は、昨年の採択決定後に内容も含めて40箇所も訂正したことが明らかになっています。これは異例なことです。研究者や市民から多くの間違いが指摘されたため、自由社が文部科学省に訂正申請をしたからです。横浜市教育委員会が採択したこの教科書は、私たちの点検で、今なお問題点や間違いの多いことが判明しています。多角的な検証が必要です。

なお、学校教育法第34条の2には、「教科用図書以外の図書その他の教材で、有益なものは、これを使用することができる」とあります。また、新しい中学校学習指導要領(社会 歴史的分野)には「様々な資料を活用して歴史的事象を多面的・多角的に考察し公正に判断するとともに適切に表現する能力と態度を育てる」とあります。個々の教師、授業をする上で教科書を補う教材作りのために、さまざまな参考文献や資料類を使うことは大切です。「教科書を教える」だけではなく「教科書で教える」ことが、広い視野に立ったよい授業を保証するからです。
私たちが刊行している冊子は、先生方が教科書を使用することを前提にした上で、教材活用の参考にするために作成したものです。なんら違法な行為ではありません。大いに活用してください。
次回は、第3号の近現代編の発行を予定しています。

2010年7月10日

横浜教科書研究会