自由社版『新編 新しい歴史教科書』でどう教えるか?

2010年4月から、横浜市の8区の中学校で『新編 新しい歴史教科書』が使用されることになりました。これらの区の多くの先生方が、自由社版歴史教科書の採択を望んでいたわけでもないのに、突如として市教育委員会が採択したことにとまどいを感じているのではないでしょうか。 この採択は、公正な採択のために設置された市審議会の答申を市教育委員会が無視し、しかも歴史教科書の採択だけが無記名投票で行われるという責任の所在を曖昧にする前例のない不当なものでした。そのように採択された自由社版歴史教科書は、検定で500か所あまりの指摘を受け不合格になり、再提出のさいにも136か所の検定意見がつけられ、これを修正してやっと合格したものです。しかも、検定で合格しているとはいえ、なお誤りや不適切な部分が多数あり、問題のある教科書です。このような教科書をどのように使用したらよいのでしょうか?
■まず、私たち「横浜教科書研究会」のこと、そしてこれまでのとりくみについてご紹介します。
 →横浜教科書研究会のとりくみ
■これまでに発表した声明を掲載します。
 →これまでに発表した声明
■自由社版教科書を使用して授業をしなければならない、現場の先生方、保護者の方、自由社版教科書を使っている中学生を指導される塾の先生方に、お読みいただきたい冊子です。 
 →自由社版『新編 新しい歴史教科書』でどう教えるか?
■私たちの活動にぜひご協力ください。
 →カンパのお願い
■研究会主催の集会などイベントのご案内です。ぜひご参加ください。
 →イベントのお知らせ
■私たちの活動に関連する有益な書籍をご紹介します。
 →参考書籍

教科書以外の図書・教材の使用の自由についての声明(2010年8月6日)

201086

教科書以外の図書・教材の使用の自由についての声明


                             横浜教科書研究会


 本年428日、横浜市教育委員会は、横浜市教職員組合(浜教組)が作成した『中学校歴史資料集』の横浜市内全組合員への配布に対し、各中学校長宛に「教科書の適切な使用等について」と題した通知文書を送付しました。通知では「各学校においては、文部科学大臣の検定を経て横浜市教育委員会が採択した教科書を必ず使用しなければなりません。学校長におかれましては、このことを改めて確認し、教員の管理監督及び教育課程の管理運営を適切に行っていただくようお願いします」として、各学校において教科書の使用の確認と教員の管理監督が指示されました。

 さらにこの問題は、5月以降に『産経新聞』や「新しい歴史教科書をつくる会」(藤岡信勝会長)によって大きく取り上げられています。『産経新聞』は、浜教組の作成の『資料集』を「教科書不使用のマニュアル」と表現、「学校教育法抵触の冊子」と決めつける報道を繰り返し行なっています。さらに、「新しい歴史教科書をつくる会」は、川端達夫文部科学大臣に対し、配布資料の回収と浜教組の厳重処分を横浜市教育委員会に指示するよう求める要望書を提出、また64日付で横浜市教育委員会に横浜市教職員組合(浜教組)の違法行為に関する請願」を提出し、市教委権限と責任における回収・処分と「文書作成と配布に関与した教員」の懲戒処分を要求しています。


県教委への抗議声明(2009年10月19日)

神奈川県教育委員会
教育委員長 平出 彦仁 様
 
抗 議 声 明

1015日に開催された県教育委員会で、横浜市教育委員会の要望を受け入れ横浜市の教科書採択地区の1地区統合の決定が行われたことに対して抗議します。
私どもは、先に請願書(実際には直前のため「要望書」として提出せざるをえませんでした)を提出し、市教委の主張する教科書採択地区の全市統合化には、現行の教科書採択制度および関連法の趣旨を無視する重大な問題があるとみられるため、現状の18地区を維持すること、また委員会においては十分な検討と慎重な審議を行うことを要請しました。
しかし、貴委員会での審議および決定過程は私どもの期待を裏切るもので、委員会においても制度変更についての理由すら明確にされないまま、しかもこうした重大な問題を、全会一致ではなく多数決という異例な形によって反対意見を封じて決定したことは、大変遺憾なことと言わざるを得ません。ここに厳重に抗議いたします。

 20091019
 
 
              横浜市の教科書を考える横浜国立大学教員有志

横浜市の教科書採択地区に関する請願(2009年10月14日)

2009年10月14日

神奈川県教育委員会
教育委員長 平出 彦仁 様

横浜市の教科書採択地区に関する請願

提出者  横浜市の教科書を考える横浜国立大学教員有志

〈 請願項目 〉
横浜市内の教科書採択地区については、現在の18採択地区を維持すること。

〈 請願理由 〉
横浜市教育委員会から貴教育委員会に対し、平成22年度より、市内の教科書採択地区を現在の18地区から1地区に変更する旨の要望が提出された。横浜市内の1採択地区化は、以下の理由から、現行教科書採択制度および関連法の趣旨を無視し、採択地区小規模化の国の方針に逆行するものと言わざるを得ない。

「赤穂浪士の討ち入り」は、今も賞賛すべきこと?(Vol.1)

「赤穂浪士の討ち入り」は、
今も賞賛すべきこと?

                                  教科書114


 赤穂浪士の討ち入りは、他の市内採用2社教科書にはありません。他社になくても、歴史学的に正確な記述であれば、先駆的と評価もできますが、果たしてどうでしょうか。



1 赤穂浪士討ち入り事件と「忠臣蔵」

  冒頭、「1702(元禄15)1214日、赤穂藩(あこうはん)の浪士が江戸の吉良邸(きらてい)に討ち入りし」と記し、いきなり「江戸の庶民の喝采をあびた」と続けたのは、いくら何でも無茶です。これは、事件から半世紀近くたった1748(寛延元)年に、竹田出雲(たけだいずも)作の人形浄瑠璃「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)」が初演され、翌年に歌舞伎上演されて大好評を得たことを、事件そのものに対する当時の評価と勘違いしてしまった記述です。あるいは、討ち入り後の泉岳寺(せんがくじ)までの浪士行進に、「庶民が拍手で送る」映画シーンを事実と思って書いたのかも知れません。赤穂事件を教材として扱うには、まずは、虚構と史実とを混同しないことが求められます。



2 史実の展開

目次(Vol.1)

目